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2021年3月28日 (日)

時代錯誤の相続制度

昨日、朝日新聞の読者からの投書欄「声」に「子なし夫婦の相続 時代錯誤では」という意見が載っていました。投稿者は76歳無職の女性です。一部引用します。

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一昨年の暮れ、夫に先立たれた。子はいない。夫の遺言はなかったが、遺産は妻の私が相続するとばかり思っていた。しかし、民法の規定は違っていた。夫の両親は他界していたので、私のほかに夫のきょうだい4人が法廷相続人になったのである。彼らは「法の決まり通りに」と主張し、相続放棄はしてくれなかった。彼らにとっては、まさに「棚からぼた餅」のようなものだった。(以下略)
(2021年3月27日(土)朝日新聞朝刊「声」欄)


 子どものいない夫婦の場合、配偶者が死亡すると誰が相続人になるのでしょうか。
 民法の規定では、配偶者は常に相続人になります。親が生きていたら相続人になります。親がすでに死亡していても祖父母が生きていれば祖父母が相続人になります。
 親も祖父母も死亡していれば兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が先に死亡していても甥姪が代襲相続者として相続人になります。配偶者と兄弟姉妹の相続の割合は配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4で、兄弟姉妹が複数人いる場合、1/4を人数で分けます。

 普段は交流の無い配偶者の兄弟姉妹、一度も会ったことも無い甥姪まで相続人になる権利があります。

 民法は、現代のライフスタイルに合わない条文がいくつかありますが、なかなか改正されません。誰かが裁判所に訴えて、長い年月をかけ最高裁で違憲判決を勝ち取らない限り、なかなか政治家は法律を変えようとはしません。

 この投稿者が嘆いている相続人の規定は、子どものいない夫婦にとっては悪法といわれている条文ですが、なぜか政治家の中からこの条文を改正しようという動きがみられません。
 明治時代の「家制度」の名残がある現在の民法(家族法)を守りたい自民党保守派の議員たちが反対しているのではないかと疑ってしまいます。

 もうひとつ、この法律を変えようとしない理由に、「兄弟姉妹、甥姪には遺留分が認められていない」というのがあります。そのため、遺言書に「妻(または夫)に全財産を相続させる」と書いておけば兄弟姉妹、甥姪は一円も相続できなくなります。「この規定があるから良いではないか」と考えている政治家も多いかもしれません。

 しかし、そもそも子どものいない夫婦が相続の規定をあまり知らないのではないかと思います。「妻(または夫)に全財産を相続させる」と双方遺言書を用意している夫婦がどれだけいるでしょうか。
 ほとんどの方が、今回の投稿者の女性のように、現実に相続が始まって初めて知る場合が多いと思います。

 もちろん、相続財産の一部なら兄弟姉妹にあげても良い、と考える方もいるでしょう。それならば、この条文は廃止し、兄弟姉妹にあげたい方だけが遺言書を用意しておけばよいことです。
 「家制度」の名残ともいえるこの条文が一日も早く改正されることを望みます。

 

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2021年3月20日 (土)

停滞する日本と結婚難の日本人男性

古い雑誌を処分する前に一通り読んでみたところ、気になる記事がありましたので一部引用します。

国際結婚から見える経済的地位の低下
結婚難の日本人男性
中央大学文学部教授 山田昌弘

(中略)日本人女性が海外へ
 外国人男性と日本人女性が海外で結婚をするケースは増え続けている。近年では、毎年約9000件ある。現地で結婚届を出しても日本公館に届けないケースも多いので、実際にはもっと多いと推定されている。
 従来は、日本人女性の国際結婚の相手は、国内外とも欧米人男性が典型だった。しかし、近年、アジア人男性と結婚し、アジアで暮らす日本人女性が急増している。トルコ、タイ、香港、シンガポールの国際結婚カップルを開内文乃氏と一緒に調査しているが、そこで見いだされるのは「成長するアジア諸国」と「停滞する日本」の姿である。
日本人女性は、結婚するためにアジアへ行ったわけではない。日本ではまだまだ女性への差別的慣行が残っている。仕事を辞めた女性は就職しにくく、子どもを育てながら働く環境は整っていない。生きにくさを感じた意欲ある女性が、留学や活躍の場を求めて海外に出て行く。
 そこで、元気なアジア人男性と出会う。雇用不安と収入低下で萎縮する日本人の未婚男性と比較して、アジアの若いエリート男性は収入もあり自信がある。そのような積極的な男性に引かれて恋愛結婚する。バンコク、香港などアジアのグローバル都市では、女性が子育てをしながら仕事をする環境が日本と比べてはるかに整っている。エリートである夫の収入は、同年代の日本人男性より高いことが多い。彼女たちは、日本ではなかなか実現できない豊かな家族生活と仕事でのキャリアを両方手に入れているのだ。
 国際結婚のあり方は多様である。しかし、日本人男性の国際結婚の減少、海外での日本人女性の国際結婚の増大の要因が「日本の経済停滞」と「日本社会における女性差別慣行」にあるのなら、このままでいいわけはない。そして、私はこの二つの要因がつながっていると思えてならないのだ。
(週刊東洋経済2012年6月30日号 THE COMPASS)

山田先生は社会学者で家族学を研究されている方です。記事の前半では、アジア人女性にとって経済が停滞している日本の男性より、若者の経済力が上昇している新興国の男性の方が魅力的に映るということが書かれています。

実際に日本人男性と外国人女性との結婚は2006年の3万5993件がピークで減少に転じており、中国、フィリピン、ベトナムなどのアジア人花嫁にとって、もはや日本人男性は選択肢に無いということなのでしょう。

9年ほど前に書かれたこの記事と現在の日本の状況がほとんど変わっていないことに私は驚きましたが、森喜朗氏の発言にみられるような無意識の「日本社会における女性差別慣行」がまかり通っているうちは、日本の国際的な魅力は低下し続けると思います。

 

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