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2013年3月 3日 (日)

婚外子の相続規定は違憲か合憲か

婚外子の相続―違憲の判断をするとき

最高裁もついに腹を固めた。そんなふうに見て間違いないのではないか。

 夫以外の男性、または妻以外の女性との間にうまれた子(婚外子)が相続できる財産は、正式な結婚をしている男女の間の子の半分とする――。

 この民法の定めが、法の下の平等を保障する憲法に反するか否かが争われている裁判の審理が、大法廷に回付された。

 すべての裁判官が参加し、判例を変更するときに必要な手続きだ。これまでの合憲判断が見直される可能性が高い。

 「半分」の取りきめは、法律婚を尊重し保護する合理的な措置として認められてきた。

 だが夫婦や家族のあり方も、人びとの意識も多様になり、ひとつの「あるべき姿」を唱えていればすむ時代ではない。

 本人には何の責任もない出生の経緯を理由に、婚外子を差別し続けることが許されるのか。

 憲法違反の結論が導きだされて当然といえよう。

 一方で、判例変更が新たな問題を引きおこす可能性もある。

 今回の裁判の対象は2001年の相続だ。「遅くともその時点では違憲だった」とされた場合、ではいつから違憲だったのか。それ以降の婚外子が絡んだ相続の扱いはどうなるのか。やり直しを求める動きが各地で起きる事態にもなりかねない。

 もちろん、混乱が予想されるからといって違憲判断から逃げるのは本末転倒だ。平等原則をしっかり踏まえ、かつ世の中のトラブルを少しでも抑えられるような考えを示せるか、審理のゆくえに注目したい。

 あらためて思うのは、政治の側の問題意識の低さである。

 法制審議会は96年、「相続は同等とする」という答申を出した。しかしその中に、夫婦が望めばそれぞれの姓を名のれる別姓制度の創設が盛りこまれたこともあって保守層が反発し、歴代政権は改正法案を国会に提出することすらしなかった。

 法律であれば、いつから「同等」とするのか基準を明示し、経過規定を設けるなどして、さまざまな不都合を避ける工夫が可能だった。この問題をめぐって最高裁が出した合憲の判決や決定の中で、立法による解決をうながす意見を表明した裁判官もたくさんいた。なのに、国会は動かなかった。

 この大法廷回付は、国連の勧告も無視し続けた、先見性を欠く立法府に対し、司法が「もはや放っておけない」と判断したと位置づけることができる。

 民法の問題にとどまらない、深い病根を見る思いがする。
(朝日新聞2013年3月3日(日)社説)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi

非嫡出子の相続分規定は、死刑制度の存廃問題と共に昔から議論されてきましたね。法律家や大学の法学部の先生の中にもこの規定の見直し論者は大勢います。それでも過去最高裁で合憲とされてきた一番の論拠は「法律婚の尊重」という一点に尽きると思います。

もしも、これを見直すことになれば法律に基づく婚姻制度そのものの意味が問われます。
また、この問題は死刑制度と同じで一つの論点に表と裏があり、どちらか一方だけを尊重するわけにいかないところが難しいです。

例えば、見直し論者の方々が真っ先に挙げるのは「非嫡出子自身に責任はない」ということですが、親を選べなかったという意味では「嫡出子自身にも責任はない」ことになります。

また、法律婚をしているある夫婦の夫に愛人がいてその愛人との間に子供が生れたとします。そして、父親がその子を認知した後その子を連れて離婚し、全く別の女性と正式に婚姻し子供が生れたとします。この場合、その父親には先に生まれた非嫡出子と嫡出子がいる状態になります。
この事例で「法律婚の尊重」を考えると、おかしなことになります。最初の妻との間においては、愛人との間の子供は不貞行為の結果生まれた子ということで、嫡出子の立場を尊重する法律は合理的な理由があると言えますが、二番目の妻との婚姻関係においては、その子は単なる男性の連れ子にすぎず、「法律婚の尊重」に結びつきません。

法律家の方々は「法律婚の尊重」だの「法の下の平等」だの憲法上の難しい議論をしていますが、現実問題としては民法の規定「非嫡出子の相続分が嫡出子の半分である」つまり、「嫡出子の半分しか財産を分けてもらえない」ことをどうするのかという点にあります。それならば、解決方法も現実的に考えれば良いのではないでしょうか。

例えば、問題になっている民法900条四号ただし書前段の規定は違憲とし削除した上で、民法1028条に定められている遺留分(非嫡出子は嫡出子の2分の1)の規定はそのままにしておくというのはどうでしょうか。

「900条と1028条はワンセットだからこれも違憲だ」と言われてしまいそうですが、法律婚の尊重と配偶者(特に正妻)の立場を尊重するならば、遺言がある場合に限り嫡出子がより尊重される道を一つくらい残しておくのはやむを得ないと思うのですが。

遺留分と遺言の関係は結構重要だと思うんですよね。
例えば、子供のいない夫婦で、夫が亡くなり妻が残された場合(逆もあり)、夫に兄弟姉妹がいれば彼らも相続人になります。しかし、兄弟姉妹には遺留分が無いため、「妻に全財産を相続させる」旨の遺言があればその通りになります。
但し、遺言書が無い場合は民法900条の規定通り相続財産の4分の1が兄弟姉妹にいくので、子供のいない夫婦はお互いに財産を残す旨の遺言書を書くことが重要なのです。

上記の事例にもあるように、残された妻が遺言によって守られるのですから、被相続人が正妻と嫡出子に、より多くの財産を残したければ遺言を残せば良いのです。但し、遺言が無ければ嫡出子と非嫡出子の相続額は平等になるので、現実問題としてはこの辺りでバランスをとるしかないのかなあと思うのです。

逆に、非嫡出子に嫡出子と同等の財産を分けたいのであれば、単に遺言でその旨書けば済む話だともいえます。これだと民法を変える必要はありませんが、非嫡出子が差別的だという規定は残ります。

もう一つ問題なのは財産に関する考え方です。
一般的には、夫婦の財産は婚姻中に協力して築いたものという意識がありますから、夫が死に、その愛人の子に嫡出子と同じ相続の権利を与えるというのは、正妻の立場としては自分の財産の一部を取られるような気持ちになると思います。嫡出子と非嫡出子の法の下の平等を正妻の立場より優先させて良いのだろうかという問題です。

日本では、非嫡出子を相続において平等に扱うことに対しまだまだ反対論が根強いようですね。これは外国に比べて非嫡出子の割合が非常に少ないからではないでしょうか。憲法を持ち出して「法の下の平等」を主張するのは一見正論のようですが、法律婚の妻や嫡出子の心情を考えるとそれだけでは割り切れないものがあります。

何だかごちゃごちゃ書いてきてまとまりが無くなってしまいましたが、要は非嫡出子の名誉のためには法の下の平等を尊重するべきで判例変更をする必要があるけれど、現実問題としては遺言書で嫡出子と平等の財産を分け与えることは可能なので、そちらを尊重するなら判例変更をする必要は無いということです。

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