« 小鳩、ヒヨドリから引導を渡される | トップページ | 少なくとも3年は我慢 »

2010年6月 6日 (日)

議院内閣制と首相の権力

共同通信社が4日から5日にかけて実施した全国緊急電話世論調査で、菅直人新首相に「期待する」と答えた人が57.6%、民主党の支持率も36.1%と急上昇しました。トップの首のすげ替えがこれほどまでに効果があったとは、民主党の参院選候補者も驚くと共にホッとしていることでしょう。

ある意味これは国民をバカにしていることなのですが、問題は国民側にもあります。日本の経済状況は良いとは言えませんから国民は余裕が無く、忍耐力も無くなってしまいました。その結果、政治家には早く結果の見えることをやって欲しいと望みます。その点、トップの顔が変わるということは非常にわかりやすいことですね。「菅さんなら何かやってくれそう」という期待値が高いのも理解できます。

また、どうも私の周りを観察してみると、先の衆院選で民主党に投票した方々は、鳩山・小沢体制に失望させられたけれど、それでも何とか民主党を支持するための理由付けを求めていたようです。民主党へ投票したことに対する自己正当化とでも言ったらよいでしょうか。そこへ非小沢の菅さんの登場ですから「やったーっ!」って感じですね。これが支持率V字回復に結びついているのでしょう。

冷静に考えれば普天間問題も、政治とカネに関する問題も何一つ解決のめどがついていないというのにこんなに楽観的で良いのかなとは思います。もちろん、私自身も政治家には何度も何度も騙されてきて、やっとここ10年くらいの間、冷静に考えられるようになってきたのであまり偉そうなことは言えませんが・・・

敵失頼みの野党にとって政権党の支持率上昇は痛手ですが、自民党政権もこうしたことを過去繰り返してきたので、あまり威張れたものではありません。国民に受けが良さそうな首相を担ぎ出せば、ある程度の支持を得られたのは自民党政権時代に実証済みなので、この手法を批判してきた民主党も次の衆院選までは繰り返す可能性があります。

国民の意思とは無関係に首相交代が起こるたびに、一部の人から「首相公選制だったらどうなのか?」という声が上がりますがどうでしょうか。最近聞きませんね、「首相公選制」。

2001年に小泉純一郎首相が誕生した時、この首相公選制という言葉はかなり注目されました。自民党総裁選ではあったものの、政権党であった自民党総裁は総理大臣に指名されるので、事実上の総理大臣指名選挙です。この時は一般党員の声が国民の声を反映し、派閥の論理を押さえ込み小泉氏が勝利しました。そこで擬似首相公選が行われたとも言われます。

その後小泉首相の強い希望により「首相公選制を考える懇談会」という首相の私的懇談会が作られ審議の経過も報告書としてまとめられています。しかし、最近では首相公選制についてほとんど語られないほど国民の関心も薄れています。当の小泉首相も政権の途中からはそれほど熱心に取り組んだ様子が見えません。

それもそうでしょう。2005年の郵政選挙では首相の力の大きさを見せつけてくれましたから。あの郵政民営化法の攻防では、議院内閣制においても日本国の首相の権力は非常に強いということがわかりました。首相公選制に熱心だった小泉首相でしたが、結果的に議院内閣制においてリーダーシップが高まったというのはある意味皮肉な結果でしたね。

もちろん、そうした権力の基盤としては、与党が議会において安定多数を占めていること、国民からの高い支持率があることが必要ですが、何といっても支持率が重要でしょう。

支持率というのは首相個人の魅力に負うところが大きいので、議院内閣制において誰もが小泉首相のような力を発揮できるとは限りません。首相が変わるごとに内閣や党との力関係も変わり古い政治スタイルが復活する可能性も高いでしょう。多くの首相にとって首相の権力は非常に不安定なものだといえます。菅首相の支持率が今高いとしてもそれがそのまま首相のリーダーシップの強化につながるのかどうかはわかりません。

私も昔は首相公選制に期待していた時期がありましたが、今は反対です。といって現在の議院内閣制も良いとは思っていません。民主主義は手続きに時間がかかるという手間がありますが、そういう意味では長い期間を経て行われるアメリカ大統領選は非常に丁寧な民主主義の手続きを踏んでいると思います。

別にアメリカの大統領選を見習えとは言いませんが、少なくとも日本は現在の議院内閣制の下で国民にわかりやすい丁寧で誠実な国会運営をしてもらいたいですね。どうも民主党の議院運営は身勝手で乱暴です。

先日の郵政改革関連法案の本会議で、中立であるべき衆議院の横路議長が野党国対委員長が申し入れをおこなっている最中に、「とにかくやらせていただく」と述べて一方的に本会議のベルを鳴らし問答無用とばかりに採決を行ったことは恥ずべきことです。こうした民主主義を踏みにじるような議院運営を容認すれば、菅首相の支持率も徐々に下がるでしょう。

私が首相に求めるのは、孤独に耐えて一人で決断できることです。国民に不人気な政策であっても必要であればやらなければなりませんし、また、永田町の人々に逆らってでも国民のための政策を実現しなければなりません。そういう決断力が結果として本当の意味での国民の支持につながってくるのだと思います。議院内閣制における首相の権力は国民の支持率が支えていることを菅首相は忘れないで欲しいです。

~参考文献~
「首相公選を考える」(中公新書)
大石 眞、久保文明、佐々木毅、山口二郎 編著

|

« 小鳩、ヒヨドリから引導を渡される | トップページ | 少なくとも3年は我慢 »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/176106/48560575

この記事へのトラックバック一覧です: 議院内閣制と首相の権力:

« 小鳩、ヒヨドリから引導を渡される | トップページ | 少なくとも3年は我慢 »