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2009年11月21日 (土)

それでも郵政民営化は必要だ

今朝の朝日新聞のオピニオン欄に「それでも郵政民営化は必要だ」と題して日本郵政社長を辞任した西川善文氏(三井住友銀行顧問)のインタビューが掲載されていました。
WEB上に掲載されていませんので以下、一部分紹介させていただきます。長いインタビューですので詳細は紙面記事をお読み下さい。

―――やり残したことは。
「言い出せばきりがない。その時、その時でやらなければならないことはたくさんある。いつ辞めても同じじゃないかと思う。あえて挙げれば、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式上場だ。これは、郵政民営化を成し遂げていく上でもっとも重要なマイルストーンだった。ここ1年半は上場に向けて軌道に乗ってきたという実感をようやく持ち始めた矢先だった」
「融資業務はこれまでやったことがなかったが、現在、スルガ銀行と提携して住宅ローンの媒介をしている。女性や高齢者など一般の銀行があまり融資しない方々にリスク判断してローンを販売している。農業金融というアイデアもあった。例えば、有機野菜を栽培したいという人がいたら、休耕田を紹介して、農業を始める資金を貸す。できた野菜を郵便事業の物流システムで全国に販売して、代金は郵便局で回収するといったビジネスモデルも考えた。しかし、本格的に融資業務をやるには人の育成からやらなければならず、まだまだ時間がかかる」
―――成果として自負していることは?
「今年1月の全銀システムとの接続は大きかったと思う。全銀システムに加入することで、ゆうちょ銀行が民間銀行に仲間入りできた。利用者のサービス向上という意味で大きかった。『なぜ、郵便局から銀行に送金できないのか』といった声が多くの利用者から寄せられていたからだ。全国銀行協会が協力してくれたのは、郵政が民営化され、ゆうちょ銀行も近い将来上場され普通の銀行になるということが前提だった。それによって競争条件が他の銀行と平等になるからだ。将来も政府100%出資のままだったとしたら、認められなかっただろう」
「経営の効率化のため、郵政のOBが天下りしている関連法人との資本関係や取引関係を見直すプロジェクトをスタートした。民営化の議論をリードした松原聡・東洋大教授をトップにした通称『松原委員会』で、郵政OB約2千人が再就職している219法人を対象に、不透明な取引の洗い出し作業をやってもらった。機械の調達関係や幹線輸送の会社など、どうしてもOBのいる会社との取引は不透明になりがちだ。どの役所にもあるが、郵政の場合は特に多かった」
―――その松原さんも郵便事業会社の社外取締役を退任されました。
「一昨日(17日)、松原さんから電話があり、『持ち株会社の幹部から、辞めるようにいわれました』と話していた。思わず『松原さんまで辞めさせるんですか』と聞き返した。松原さんは郵政全体に関する理解も深く、的確な指摘をいただいていたので、郵便事業会社としては煙たがっていたかもしれない」
―――逆にうまくいかなかったことは?
「郵便局の『ハブ・アンド・スポーク』化ということを考えた。10~15局に1局程度ハブ(拠点)郵便局を設置し、そこに優秀な人材を投入して成績を上げようという考えだった。ところが、これは人事異動を伴うので、局舎つきの世襲の郵便局長から大変な抵抗が起きて、実現できなかった」
「局長や局員の異動が少ないのは、不祥事の原因の一つになっていると思う。ある時、地方の局に監査が入って現金を調べたところ、日銀から届いた5千万円の包みがそのままの状態であったのでOKを出したが、後で調べたら、中身は紙に取り換えられていたという事件もあった。金融機関として恥ずべき実態にもかかわらず、お客さんが郵便局を信頼してくれてたのは、背後に国の信用があるからだ。民営化すれば、自分たちの力で信頼を勝ち取っていかなければならない。そういう意識の浸透はまだまだだ」
―――政府から頼まれて社長になって、努力したのに、最後はこのような形で辞任する結果になりました。
「むなしい。私は民営化がベストだと考えて、真摯に全力を挙げて取り組んできたつもりだ。今回の巻き返しの方向は、全く理解ができない。これも政治だから、決められたことはいかんともしがたいが、むなしい気持ちだ」
(朝日新聞2009年11月21日(土) オピニオン インタビュー「それでも郵政民営化は必要だ」より引用)

朝日新聞は反小泉内閣と思われがちですが、靖国参拝問題とは異なり郵政民営化をはじめとする構造改革路線は支持してきました。それ故現政権の成長戦略の無さや構造改革に逆行する姿勢には批判的です。今回のインタビューはテレビなどではあまり語られなかった西川氏の思いを知ることができて興味深かったです。もう少し深く掘り下げて聞いて欲しかった部分もありましたが、良くまとめられているインタビューだと思いました。

亀井静香郵政改革・金融相のやろうとしていることは、ひと言でいえば『財政投融資の復権』です。実現のためには民間であれば当然縛られる銀行法や保険業法等の法律は適用できなくなるので新たな規制を検討しているようです。西川氏は『そもそも銀行法や保険業法を適用しない銀行、保険会社など、マーケットが絶対に受け入れない』とバッサリ斬り捨てていました。マーケットが受け入れない民間企業の生き残りを考えれば、国営化に戻すしかないということでしょう。

インタビューを読んでもわかるように、本格的な民営化のため西川氏ら経営陣は様々なアイデアを考えていたようですね。実現できていたら素晴らしい会社になっていたことと思います。確かに、人材の育成や世襲局長が改革に抵抗していることなどを考えると、実現までには時間がかかるかもしれません。しかし、民営化がスタートして以来、やる気のある職員にとっては未来に希望が持てるやりがいのある職場だったのではないでしょうか。それが今回の見直しですべてひっくり返ってしまったことは残念でなりません。

私は、麻生政権下で郵政民営化への雲行きが怪しくなっていた頃から、『なぜ西川氏は郵政民営化の必要性をもっと世論に訴えないのか』と疑問に思っていました。それについて西川氏は『政策に関することだから、私はとやかく発言すべき立場にはないと思った』と語っています。
また鳩山邦夫前総務大臣との対応についても『大臣が代わると考え方も違ってしまう。私が『政治オンチ』だから、あのような展開になるとは想像できなかった』と予想外の事態に戸惑っていらっしゃったようです。
西川氏は本気で政治に介入しようと思えばできたはずですが、それをしなかった訳です。民営化反対論者のなかには西川氏のことを極悪人のように語る方もいますが、このことをどう受け止めるのか聞いてみたいものです。

恐らく、西川氏は政策面は政治家を信頼して、ご自分は経営者という立場を超えるべきではないという考えだったのでしょう。しかし、西川氏は政治家に対しあまりにも無防備でした。全面的に信頼できたのは小泉元総理だけだったと思います。
信頼できると思っていた政治家に裏切られたのですからむなしい気持ちでいっぱいだったと思います。今思えば、小泉政権後はもう少し政治家に対して警戒心を持つべきでした。また、国民の多くは民営化を支持していたのですから、経営者としてもっと世論に訴えても良かったと思います。とにかくお疲れ様でしたと申し上げたいです。

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コメント

こんにちは~
インタビュー記事の紹介有難う。
郵政の経営陣には、有力財界人が名を連ねておりこれからと期待していたのに本当に残念でたまりません。
松原さんまでもが、辞めさせられたなんて酷い話です。
亀井大臣は郵政を国有化に戻し「財投投資復活」を目論んでいるようですね!
そうなったら国民負担を増加させる可能性は大です。
先日、郵便局に行き穏やかな顔で「郵政は国有化に戻すの?}と聞いたら「まだはっきりとは決まってないのよ~」とニッコリ顔です。「戻す可能性はあるのね?」局員「う~ん。。。」ですって。

投稿: 葉音 | 2009年11月22日 (日) 17時24分

>葉音さま
こんばんは~
運スレでも預金を解約するとか言ってる人たちがいましたね。私はもちろん満期が来るのは継続しませんが。
郵政民営化は国民のほとんどが賛成していたのですから、私達ももっと大きな声をあげなければいけなかったのかなと反省しています。
城内実議員のような郵政票をバックに当選してきた議員が「真正保守」だなんてあきれてしまいます。
ああいう議員を当選させてしまうような民度なんですから、やはり日本は一度焼け野原にならないと目覚めないのかもしれません。

投稿: minori | 2009年11月22日 (日) 23時57分

こんばんは。

このインタビューがwebで掲載されないなんて・・・
minoriさん、ご紹介ありがとうございます。

投稿: M・M | 2009年11月23日 (月) 19時31分

>M・Mさま
こんばんは。
朝日新聞は近年極端にweb記事を減らしたような気がします。ほんの概略なら以下のURLに載っているのですが・・・
http://www.asahi.com/business/update/1120/TKY200911190520.html

投稿: minori | 2009年11月23日 (月) 20時15分

すみません、お手数をおかけしました。
URLの記事、拝見しました。

何と言いますか、本当にもったいない人を・・・

投稿: M・M | 2009年11月25日 (水) 17時32分

>M・Mさま
こんばんは。
全国銀行協会の永易会長は、「ゆうちょ銀行への利便性供与は民営化が大前提で、その条件が変わるなら公正な競争条件ではなくなる。民営化が凍結されれば銀行界も対応を見直さざるを得ない。(日本郵政グループの株式売却凍結)法案が成立した場合は、相当のことを申し上げざるを得ない」と提携の見直しなどを示唆しました。
西川社長が苦労して成し遂げた相互送金システムも見直される可能性がありますね。
全銀協が怒るのも当たり前ですが、西川氏が銀行出身者であったからこそ協力してもらえた側面はあったと思います。
この際、相互送金システムの停止など、ゆうちょ銀行の利用者が激怒する見直しをしたらどうでしょう。国民はもっと怒るべきです。

投稿: minori | 2009年11月25日 (水) 23時45分

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