毎日・北九州フォーラム:岸井成格・毎日新聞特別編集委員が講演 /福岡
小倉北区のリーガロイヤルホテル小倉で27日に開かれた「第6回毎日・北九州フォーラム」(北九州地域懇話会、毎日新聞社主催)。演題は「混迷政治から読み解く世界と日本」で、毎日新聞の岸井成格(しげただ)特別編集委員(64)は、聴衆約700人を前に現在の政局や世界の動きを熱く語った。(中略)
岸井氏はまず、世界が注視する北朝鮮の核実験に言及。「北朝鮮の瀬戸際外交の本質は、核とミサイル開発のための時間稼ぎ。世界は今まで、核やミサイル開発をやめるよう要請してきたが、すでに持ったとなると次元が異なる」と指摘。目的は国威発揚や米国との直接交渉などが考えられるが、日本に対して「目覚めさせることを意図している」と話した。
背景として岸井氏は「日本は北朝鮮と戦後処理をしていない。国交正常化して平和条約を結ぶと、(賠償金として)経済協力の形で、韓国に出しただけは払わなければならない。現在の額では1兆円」と説明した上で「日本を脅し『もうミサイルを撃たないでくれ』と言われて初めて交渉が成り立つという考え方。これを知らないと出方を読み切れない」と訴えた。(後略)
(Yahoo!ニュース-毎日新聞 北九州版5月28日13時1分)
岸井氏の発言は非常に誤解を生じる表現ですね。「日本は北朝鮮と戦後処理をしていない」という言い方は、日本が戦後賠償や補償を行っていないという意味で言ったとすれば間違いです。正しくはこういうことです。
日本と朝鮮半島との賠償問題について、日本政府としての基本姿勢は一貫しています。
すなわち日本の植民地であった朝鮮は、交戦状態にあったことはなく、主権国家間同士の戦争終結に際しての賠償や補償はあり得ないということです。
1965年(昭和40年)の日韓基本条約及び関連諸協定では、当時の朴政権が、この日本側の立場を受け入れ、日韓双方が請求権を放棄するとともに、無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドル(1800億円)の経済援助を行うことで決着しました。
また、日本の「財産請求権」について触れておかねばなりません。
サンフランシスコ講和条約(1952年発効)で、日本が整備した鉄道、港湾や預貯金、保険などの財産について、日本と韓国(北朝鮮)が互いに請求できる権利が認められました。
具体的処理は、第4条(財産)で日本と「特別な取り決め」を結び解決すると規定。日韓国交正常化交渉では、日韓両国が財産請求権を放棄、日本が5億ドルの資金提供をする経済協力方式で合意したのです。
仮に日本がこの「財産請求権」を北朝鮮に行使したらどうなるのか。これがなかなか興味深いんですね。
戦前に日本が朝鮮半島(北朝鮮と韓国)に残した総資産は、連合国軍総司令部(GHQ)や日本銀行、旧大蔵・外務両省がそれぞれ調査を実施しています。
GHQの試算では1945年8月15日時点で1ドル=15円で総資産891億2千万円。総合卸売物価指数(190)をもとに現在の価格に換算すると、16兆9300億円に相当します。
このうち、政府、個人資産と港湾など軍関連施設以外の資産は、鴨緑江の水豊ダムなど北朝鮮に残したものが当時の価格で445億7千万円。軍関連資産は16億5千万円となり、非軍事と軍事の両方で462億2千万円。総合卸売物価指数の190を掛けると現在価格で8兆7800億円相当となります。
逆に北朝鮮の日本に対する財産請求額を推定する材料として、韓国政府が49年3月に米国務省に提出した「対日賠償要求調書」があります。金や美術品など現物返還要求分を除き、要求総額は314億円(1ドル=15円)で現在に換算して5兆9600億円。これは北朝鮮地域の財産も一部含めた額とみられます。
このため、サンフランシスコ講和条約に基づく北朝鮮の国際法上の請求額はこれをさらに下回り、「日本との差額は5兆-6兆円になると推定される」(政府関係者)。
北朝鮮側は、91年に始まった日朝国交正常化交渉から、日本政府に対し、数千億円から約1兆円に上る「補償」を要求してきたとされています。
しかし、日本政府は講和条約という国際法上の権利と65年の韓国との国交正常化とのバランスを考慮。現実的な解決策として、メンツよりも実利を優先させた「経済協力方式」による資金提供には応じられるとの方針を伝えてきたのです。(数字等は産経新聞、2002年9月13日朝刊から引用させてもらいました)
どうやら北朝鮮は、日本が財産請求権を行使するなら北朝鮮側の支払い超過となるため「経済協力方式」に転換したのが真相なんじゃないかということですね。厳密に言えば日本は払う必要も無いということでしょうけれど、韓国とのバランスを考慮して上限1兆円というのが落としどころということです。
ちょっと話が脇道にそれますが、1965年の日韓国交正常化に至る交渉過程では韓国がとんでもない要求をしていたことがわかっています。
日韓国交正常化の際に、日本側が植民地支配下の強制動員被害者らへの個別補償を申し出たのに、韓国側が「政府が一括支払いを受け、処理する」として、これを拒否していたという事実です。東大東洋文化研究所に保存されている日韓会談の会議録(韓国語)で確認されています。
先日亡くなられた韓国の盧武鉉前大統領のとった日本の植民地時代の資料をすべて公開するという政策の一環で出てきたようなのですが、これは韓国にとっては非常に都合の悪い資料でした。
韓国側は同会議録の中で「補償金の支払い問題は国内問題として措置を取る考えで、わが政府の手でやる」と、韓国政府がまとめて補償を行うことを主張。個別補償の案は見送られ、経済協力方式で決着しました。
このように補償問題は、韓国政府が植民地支配に関する請求権を放棄する代わりに、日本から経済協力資金を受け取る形で決着したのですが、韓国政府が被害者補償に資金のごく一部しか充てなかったことへの不満が韓国内で今でも残っているのです。
韓国KBSによると、61年5月の日韓会談第5回会談の会議録で、日本側は「日本の援護法を援用し個人ベースで支払えば確実だと考える。責任を感じており、被害を受けた人々に対し、それに応じた措置を取れず申し訳なく考える」と表明したことを発表しました。
結局、韓国政府は資金を国民に十分に分配せず、受け取った経済援助資金のほとんどを、浦皇(ポハン)製鉄所の建設をはじめ公共事業に使い、その結果、公共事業で潤った財閥が成長していったのです。韓国政府は長い間この事実を公表せず、日本は賠償を十分にしていないとの印象操作をし続けていたんですね。
そもそも日本は、経済支援と個人補償の両方を計画していたのに、韓国政府が個人補償を自分の手でやると言い出したため、日本は個人補償を経済支援に上乗せした。つまり、韓国政府は本来個人補償に使われるべき分を、経済復興のために使ってしまったということ。個人補償の請求は韓国政府にするべきだというのはこれが根拠です。
まぁ調べれば調べるほど韓国や北朝鮮に不利な資料がたくさんあるわけです。こういった事実を国民が知らないからといって、岸井氏がいかにも日本が北朝鮮に補償をしていないかのような印象操作をしたのであれば訂正すべきでしょうね。
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