世襲議員、嫌なら有権者が落とせばいい
小泉純一郎元首相が今期限りで政界を引退する。評価の分かれる「改革の光と影」を残して。勘所と潔さはさすがだが、跡を継ぐのが子息となるとどうか。世襲だなんて、小泉さん「らしく」ない。
小泉氏が次の総選挙に出ない、とのニュースは政界を驚かせた。ただ当人にとっては至極当然の決断であったろう。
二〇〇三年の総選挙直前、小泉氏は中曽根、宮沢両元首相に引退勧告した。その際、父の純也・元防衛庁長官が亡くなった年齢にちなんで「六十五歳勇退」検討をメディアに公言していた。
現在六十六歳。「筋を通す」美学にこだわる小泉氏らしい出処進退の判断だった。本来、功成り名を遂げた首相経験者は後進に道を譲って議員を退くのが望ましい。第一線に執着する人たちに、小泉氏はその範を示した。
首相在任中は世論の支持を受け郵政民営化や経済の構造改革を推進した。だが副作用も小さくなかった。自民党は総裁選で、改革路線にこだわらない麻生太郎氏を大勝させた。総選挙向けのポスターから「改革」の文字は消えた。「小泉時代」は事実上終わっている。
小泉氏は地盤の衆院神奈川11区の後継に次男を指名した。小泉家は祖父から続く政治家一家だ。後継の次男は“四世”となる。
「自民党をぶっ壊す」と宣言し確かに派閥も古い支持基盤も崩壊した。が、党をむしばみ、政治を劣化させたとも指摘される世襲議員の問題は手つかずだった。「地盤、看板、カバン」の相続は政治家を家業とするに等しい。その分、政治に意欲ある人物の国会への道が閉ざされ、指導者にふさわしい人材が枯渇する。安倍晋三、福田康夫両氏の政権投げ出しは世襲政治の弊害の典型例でもある。
発足直後の麻生内閣の支持率はメディア各社の世論調査で50%前後。総選挙へ弾みを狙った与党は肩透かしを食った。首相を含む内閣のメンバー十八人中十一人が世襲議員。うち首相経験者の子や孫が四人も並ぶ。国民と懸け離れた「世襲内閣」と、期待外れの支持率とは無縁でなかろう。
世襲は自民以外にも広がっている。規制すれば、憲法の「職業選択の自由」に抵触するとの主張もあるが、各党が真剣に考えるべき課題だ。民主党がまとめた政治家の資金管理団体の引き継ぎ禁止も一案である。もちろん最大の規制策は世襲を安易に許さない風土を有権者が築くことだろう。
(中日新聞2008年9月27日 社説)
以前、「国替えと世襲制限について」というエントリを書いた手前、小泉さんのことに触れないのは不公平なので、あえて厳しい意見を表明していた中日新聞の社説を取り上げてみました。
私の意見はエントリにも書いたとおり、「世襲の禁止ではなく、世襲に一定の制限をかける」というものです。繰り返しになりますが、英国並みに「親と同じ選挙区からの連続立候補の禁止」はやるべきではないだろうか、ということです。
「親と同じ選挙区から出ることが圧倒的に有利であること」、これは否定できない事実なのですから、他の立候補者との公平性を考える上でも合理的な考えだと思っています。
実際は隣接している選挙区から立候補しても、世襲立候補者の優位性はかなりあるといわれているため、どこまで選挙区に制限をかければいいのかは課題です。
こうした意見を持つ私からすれば、やはり、小泉元首相の次男への後継指名は手放しでは賛成できません。ただし、この問題を小泉さんだけに限って攻撃しているメディアは明らかにおかしい。世襲議員は今や与野党問わず議員全体に広がっており、また、現行制度上許されていることでもあるので、世襲が悪いのならば民主党の小沢代表や鳩山幹事長も批判の対象にならなければおかしいのです。
以前、秘書給与の流用疑惑が発覚した際、調べれば調べるほど与野党問わず行われていたことがわかってしまいました。当時、税金還流の疑惑を招くとして、国会議員が身内を公設秘書にすることへの疑問も投げかけられたのですが、これも与野党問わない問題であったため、結局抜本的な対策が講じられることも無く、問題追及も今ひとつ迫力がありませんでしたね。世襲問題も同じですから、この問題に本気で斬り込むのはかなり困難だと思います。
これは私の想像なのですが、小泉さんが次男を後継指名したことは小泉さん自身の強い希望ではないような気がします。ご長男の孝太郎氏が俳優になる時も反対しませんでしたし、子供に政治家を継ぐよう強制したことなど一度も無いはず。
恐らくこれは小泉家、もっと言えば姉の信子氏を中心とする親族の強い希望があったのだと思います。小泉さんはお姉さんには頭が上がりませんから_| ̄|○
それに、地元支持者の要請も強かったのでしょう。もちろん、進次郎氏本人の出馬意欲は大きかったと思いますが、それ以上に周りの力の方が大きかったと思っています。
進次郎氏は大変優秀な方らしいですから、全然違う選挙区で勝負させても良かったような気もします。落選したっていいじゃないですか。敗北経験は人間を成長させますし、その方が小泉元首相らしかったと思うなぁ。小泉さんはライオン(シシロー)って言われたから「獅子の子落とし」の迷信じゃないけれど、「子供に楽をさせちゃいけない、谷底から這い上がってくるくらいでなければ」ってイメージなんだな~(笑)
私は将来的には世襲制限をかけるべきだと思っていますが、どんな選挙制度であれ最終的に当落を決めるのは有権者です。
大阪府の橋下徹知事は26日、小泉元首相が次男を後継指名したことに対し記者団に
「いやだったら有権者が落とせばいい」と語りました。
そうです。この言葉に尽きます。
決めるのは有権者なのですから。
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コメント
こんばんは~
そうです!一回位落選した方が本人にとって良い勉強になります。
小泉さんも落選してますもんね!
そうか~「獅子の子落とし」ねぇ時代も変わってそういう親は現在いないでしょうね~。
投稿: 葉音 | 2008年9月27日 (土) 22時08分
>葉音さま
こんばんは~
小泉さん自身は「そう簡単には議員になって欲しくない」と思っているのでは。
しかし、世襲を批判する前に、「姫」とか変な議員を簡単に当選させてしまう有権者の方が問題だと思いますね。
世襲は立候補の地域に制限をかければある程度公平性を保つことはできるけど、タレントやら単なる話題性だけで当選しようとしている候補者も多いですからね。
有権者が候補者の本質を見抜く目を持たないと、いつまでたっても失敗します。
投稿: minori | 2008年9月28日 (日) 00時09分
はじめまして、意夢僧・華衣(いむそう・けい)と申します。古い記事にコメント入れてしまい申し訳ありません。政治ネタのブログをふらふらしてここにたどり着き、この記事が気になったもので・・・
今回の世襲問題は麻生内閣の顔ぶれと小泉さんの息子のことでダブルパンチでしたね。それに福田さん安部さんと、世襲総理大臣があまりいい結果出せなかったのも、ますます悪い印象でした。
ただ私は、「世襲だから」ということはあまり関係ないように思います。そんなこといったら小泉さんでも小沢さんでもみんなそうです。むしろトップに上がってくる人で世襲でない人を探す方が難しいくらい・・・(汗
「人となり」が世襲がらみで勝手に決められていくのは、私は嫌いな考えです。実は私、3年前まで父がやってきた会社の社長をやっていました。いろいろ事情があって今は会社を閉鎖しサラリーマンですが、「2代目」というのはそれなりに世間の目が偏って見ていたものです。同じ路線を歩めば「父から授かったもので楽してる」、破天荒をやってみると「世間知らずのお坊ちゃま」と言われたものです。「オレは父じゃなくて『オレ』なんだ!!」と何度か泣けてくることもありましたよ。
ま、世間にいくらそんな泣き言を言っても、確かに「受け継がれるもの」が存在することも事実ですから「世襲問題」というのは存在することを否定しません。私も立候補地を変えるなどの措置は必要とも思います。けれど、「感情論」でプライバシー絡みを含んだ話を盛り上げるマスコミの姿勢は、とても好きにはなれません。
ところで、演劇、オペラ等にも関心があるとか・・・実は私、田舎で歌劇団の役者もしてます・・一応「オペラ」です。
よろしければ私のブログにもお立ち寄りいただけませんか?ここに貼ったアドレスは時事ネタ専門のサブブログです。オペラ・プライベート等の本ブログは
「夢をあきらめない」
http://imuso.blog.shinobi.jp/
です。
では、またよろしくです。
投稿: | 2008年10月 1日 (水) 11時40分
スンマセン!!
自分の名前を入れるの、忘れてました。↑
投稿: 意夢僧・華衣 | 2008年10月 1日 (水) 11時42分
>意夢僧・華衣さま
コメントありがとうございます。
世襲問題は難しいですね。世襲は悪いことばかりではなく良い面もたくさんあると思います。私は能狂言を好んで観に行くのですが、伝統芸能の世界は家元制度であり、まさに世襲制度によって成り立っている世界です。何百年も受け継がれてきた芸は、世襲だからこそ今日まで生き残ってきたともいえます。
政治家の世襲も、選挙の洗礼を受けるのですから、国家国民のために働きたいという強い志を持った人物であれば堂々と政治家になっていただきたいと思います。しかし、国民の税金から歳費を受けるという特殊な地位であるため、政治家が一種の家業になってしまうと問題ですね。そこが伝統芸能の世界とは単純に比較できないところだと思います。特に小選挙区では当選者は一人ですから、なかなか地盤、看板、カバンのない新人が当選するのは難しいです。公平の観点から立候補地の制限は合理的なのではないかと思います。
この問題に関するマスコミの姿勢は感情的で、意夢僧・華衣さまがおっしゃるとおり、私も好きになれません。報道に流されないよう、有権者の冷静な判断力が求められます。
意夢僧・華衣さまはオペラをやっていらっしゃるのですか!素敵ですね!
私はオペラは初心者で専門的なことはわかりません。気分転換に年に数回観に行くレベルです。
ブログの記事、何件か拝読しました。とても中身の濃いブログですね。過去エントリも読みたいと思います。時事ネタは賛否両論様々な意見がありますので、書くのが難しいですね。私は政治とはいっても面白ネタを書きたいと思っているのですが、なかなか面白ネタがないので、堅いネタも書いているって感じです。こちらこそ、よろしく御願いします。
投稿: minori | 2008年10月 1日 (水) 23時33分